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プチくらしの森

エコノミークラス症候群|長時間の同一姿勢に注意

医学博士植地 貴弘さん

旅行者でなくても発症の可能性が…

読者の皆さんも、「エコノミークラス症候群」という名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。飛行機利用に伴い生じた静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)を指す名称です。
静脈血栓塞栓症は、下肢などの深部静脈血栓症によりできた血栓が遊離して肺動脈を閉塞した結果、肺血栓塞栓症に至り、さらに場合によってはショック状態や突然死に至る可能性もあります。エコノミークラス症候群を含む静脈血栓塞栓症の三大要因としては、①血流の停滞②血管内皮障害③血液凝固能亢進(けつえきぎょうこのうこうしん)が挙げられます(下表)。
エコノミークラス症候群は、長時間の同一姿勢や機内の低湿度、脱水傾向などが原因として考えられています。また、“エコノミークラス”に限らず上位クラスでも生じ、長時間の移動の場合には航空機に限らず、自動車、列車、船舶などでも起こり得るため、総称して「旅行者血栓症」とも呼ばれています。
ところが、最近では5時間以上のテレビ鑑賞もリスクになりうることが報告されています。そして、避難所生活でのエコノミークラス症候群の頻度が高く、避難場所での突然死が多発していることは、今、大きな問題となっています。

エコノミークラス症候群の予防法

下の表にもあるように、避難場所ではベッドではなくざこ寝をするために長期臥床(がしょう)になりがちだったり、プライバシー確保のための車中泊で長時間座位になったりすることにより、血流停滞のリスクが高まります。加えて、トイレが確保されていないという理由で、飲水を制限することで脱水症状となり、血液凝固能亢進も重なって発症に至りやすくなるのです。
エコノミークラス症候群の予防法は難しくありません。こまめに水分摂取して脱水症状を予防すること、意識して定期的に立ったり下肢を動かしたりすることで、十分に予防可能です。少しでも発生要因に思い当たる方は、特に気をつけるようにしましょう。

静脈血栓塞栓症の三大要因

血流停滞長期臥床・加齢・肥満・妊娠・長時間座位(旅行・災害時)・下肢ギブス包帯固定・下肢静脈瘤
血管内皮障害喫煙・静脈血栓塞栓症の既往・外傷・骨折
血液凝固能亢進脱水・妊娠・産後・悪性腫瘍・薬物(経口避妊薬、エストロゲン製剤など)

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